自爆霊穂"無実ちゃんと十一対の並行世界

前作十一人の未来罪人の続編。2021/02/22更新スタート。不定期更新。

堕ちたその先-4-

見晴らしの良い丘の中腹辺りに移動したシヲンは、テキパキと支度を整えだした。「さて。ほぼ何も教えずノーヒントで放り出してきたはいいが、大丈夫かね。彼は」 全体を撮影する為の録画機材を設置し、自らの存在が露呈しないよう、付近へは最低限の準備を施…

堕ちたその先-3-

紅蘭が三度意識を取り戻した際、目を開くと視界には灰色の空が広がっていた。(ここは……?) 肌を刺すような寒気を感じるとともに、彼は自身の身体が荒縄で縛り付けられ、木材で出来た粗末な台車の荷台に寝かされている現状を把握した。 「おっはよー。元気…

堕ちたその先-2-

(ここは……どこだ……) 意識を取り戻した紅蘭(ぐらん)は、目を開くと共にそんな疑問を抱いた。 どうやら自分は何か大きな水槽の様な物の中にいて、黄緑色の液体に浸かっているらしい。 水槽の外は、一見して雑多な研究室を思わせる室内風景が広がっていた。…

堕ちたその先-1-

その男は、神に寵愛されているとしか思えないような、埒外の豪運を持ってしてこの世に生を受けた。 独自に経済学を学び続け、世界規模の長者番付に名を連ねるまでに社会的地位を築き上げるも、男は酷く退屈していた。 ビジネスにおける相対的な負けという概…

秘匿砂上下街〝サイドメイド〟-2-

砂漠の地下数百メートル直下に設営されたサイドメイドは、俺の想像を遥かに上回るぐらいに“しっかりとした街”であった。 どのような原理なのか不明ながら、地下にもかかわらず周囲は明るく、且つ遠近感を感じさせない青空の下、石造りの建物がひしめき合う、…

秘匿砂上下街〝サイドメイド〟-1-

体感では正午を過ぎたぐらいの頃合にて、ついに目的地へとたどり着いた。 3人の美女+一匹の豚もとい俺が織り成す愉快な旅の終着点は――意外や意外、辺り一面を砂で覆い尽くした殺風景な盆地である。 風情も何もあったものでは無い人の気配を一切感じさせない…

轟龍翼下唯一列島国“ヤーパン”-4-

轟龍を視認したという実体験。 だからこそ己は“加護者-ギフト-”であるという裏付けになるのではなのかという、月並みな仮説。 証明完了-Q.E.D-とするにはあまりにも不確定要素がひしめき合っており、現時点においては深く考える必要はないだろうという判断か…

轟龍翼下唯一列島国“ヤーパン”-3-

爆死から免れただけでもかなりの幸運に恵まれたヤーパン国民の中でも、更に稀少な存在である“加護者-ギフト-”が、なんと3人も俺と行動を共にしている。 運命の巡り合わせとは、些かロマンチズムに傾倒し過ぎている誇張表現にも感じられるが、これはかなり薄…

轟龍翼下唯一列島国“ヤーパン”-2-

陸の孤島というにはそれなりの広さを持つ(火本国と同様に約227,942.83㎢の面積を持つ)領土とはいえ、だ。 訳の分からぬまま地上の9割以上の同種同族が爆死したのに加えて、よもや外部――海の向こうへと出られないのは、きっと当事者達にしか計り知れない絶…

轟龍翼下唯一列島国“ヤーパン”-1-

なるべくしてなったのか、はたまたなし崩し的な成り行き上なのか、真理の真偽は定まらずとも、常に状況は移ろいゆくものであって。 ともかく。ともあれ。かくして。はたして。 俺と美人三姉妹は行動を共にするに至り、男1女3のハーレムパーティーが結成さ…

不測ハーレム-6-

「ただいまぁ。ね、ね。楽しそうにおしゃべりしてるの、ボクも混ぜて欲しいなぁ」 場違いに明るい声が、僕らの背後上方より聞こえてきた。 はっとして振り返るとそこ――4~5メートル程の高さの荷台の上には、可愛らしい幼女がちょこんと座っていた。 「おか…

不測ハーレム-5-

一見してそれは、自立歩行を可能とする大きな岩のように見えた。 この見えたというのはあくまで見間違えが故にであってーーその正体は“顔と足首以外が露出しないぐらいにサイズが大中小細様々な石をロープで全身に括り付けている人”であった。 「こんばんわ…

不測ハーレム-4-

情けないという感情よりも先に抱いたのは“やらかした”という後悔の念であった。 女性にしては背の高い――175~180cmの長身のレジイは、いわずもがな女性である。 相対するギギは10歳かそこらの子供……だとはいえ、彼が有する暴力性の折り紙付きたる脅威を、僕…

不測ハーレム-3-

「ナメてんな? ガチでテメェ僕の事ナメ腐ってんな?? 煽って煽って煽り倒してんな??? そーだよ、そのとーりだよ。効果はバツグンにテキメンで、まんまとテメェの術中にはまっちまってるよ。嬉しいか、それとも楽しいか? だったらちゃんと笑ってくれよ…

不測ハーレム-2-

「あ~~、えっと、うんと……そう! 三姉妹ってことは、レジイさんの他にもあと二人妹がいるってことなん、ですか?」 彼女の嘆願に対しての是非は一旦保留にし、僕は話題を変えるべく質問を投げかけた。 「わたくしは次女ですので姉と妹の二人が、といった方…

不測ハーレム-1-

ギギが追いついてくる前にこの場から立ち去るにあたって、右と左のどちらの生き物に乗ろうかと思案していた矢先である。 「もしもし、そこにいらっしゃる旅のお方」 恐らくは僕に向けられたであろう素性不明の声が、後方より聞こえてきた。 「だっ……誰だッ!…

刺突 後 渦炎 -5-

中学生だった頃に理科の授業で習った記憶が、おぼろげながら脳裏に浮かぶ。 曰く、火の温度の高さは色によって違ってくるという、至極基礎的な知識が。 熱と光とを発して燃えているもの・高温で赤熱したものが火と定義されており、気体が燃焼して熱及び光を…

刺突 後 渦炎 -4-

想定上ではてっきり火球や火柱の類が一直線に向かってくると思っていた矢先、明らかに拍子抜けした感が否めなかったが。 身構えた僕の前方より、ふわりとした風が吹いてきた。 しかし数秒後にその認識は大きく誤っていた事を、僕は思い知らされてしまのであ…

刺突 後 渦炎 -3-

これまで生きて来た中で、一度死ぬ迄の然程長くない人生の中で、己にとっては争い事など無縁だった。 殴られたことは沢山あっても自ら手を出したことは只の一度も無かった僕が、そんな僕がである。 明らかに暴力に慣れ親しんでいるであろう名の知らぬ男を、…

刺突 後 渦炎 -2-

皮膚が擦り切れる強烈な痛みに次いで、腹の辺りにドスンと大きなものがのしかかってくる。 「ハハァッ! 手間取らせやがって、ついに捕まえたぞオラァ!!」 追手である男の片割れは、僕へと馬乗りになっていた。 刃渡りは目検で40cmを優に超える牛刀の様な…

刺突 後 渦炎 -1-

突如として始まったこの状況。 例えば漫画のコマ枠内――あるいはゲームのプレイ画面が映し出されたモニターの枠内にて展開されいると、そんな仮定をしたならば。 これはきっと物語の導入部分だ。 分かり易すぎる位にあからさまなモブ悪役と事を構えるに至った…

異世界転生-4-

一見してそれは、馬車の様なものに見えた。 しかしながら僕が知っている馬車と大きく違う点を挙げるならば、車体を手綱で引いている2匹の生物が、あきらかに既知の馬とは異なっている点であろうか。 首が異様に長くその先端には頭部が見当たらない。 屈強な…

異世界転生-3-

興奮状態に陥りひとしきり叫んで、驚喜の感情のままにでゴロゴロと地面を転がりながら手足をジタバタと振り回し、ようやく落ち着いた後である。 僕はその場に立ち上がり、ゆっくりと深呼吸を行った。 異世界に転生したからには、転生したからこそ、いの一番…

異世界転生-2-

生暖かい汗が全身を伝う中、俺――いや 僕 はその時、雑居ビルの階段を全力で駆け上がっていた。 【!残時間00:00:00!】【!これより爆発に移ります!】 息せき切って疾走する最中、警告音-アラート-が鳴り響いたすぐ後、自爆霊が僕の内側へとすうっ…

異世界転生-1-

人は生きているからには死んでいない限りにおいて、3つの欲求に縛られている。 すなわち、食欲・性欲・睡眠欲。 俗にいう三大欲求という奴だ。 あるいは本能とも言い換えられるであろうこれら3つの中において、自分が最も重視しているのが筆頭の食欲である…

目録

第1話:大豚王-アツヤマフトシ- ∩異世界転生 1 2 3 4 ∩刺突 後 渦炎 1 2 3 4 5 ∩不測ハーレム 1 2 3 4 5 6 ∩轟龍翼下唯一列島国“ヤーパン” 1 2 3 4 ∩秘匿砂上下街〝サイドメイド〟 1 2 第2話:起死回生の魔人-キタゾノグラン- Δ堕ちたその先 1 2 …