不測ハーレム-6-
「ただいまぁ。ね、ね。楽しそうにおしゃべりしてるの、ボクも混ぜて欲しいなぁ」
場違いに明るい声が、僕らの背後上方より聞こえてきた。
はっとして振り返るとそこ――4~5メートル程の高さの荷台の上には、可愛らしい幼女がちょこんと座っていた。
「おかえりなさいモルヴ。危ないからそんな高い所に腰掛けちゃ駄目ですよ」
めっと叱る素振りを見せるレジイへペロリと赤い舌を出しながら、おそらくは三姉妹の末っ子だろうモクブは座った姿勢のままで ゆ っ く り と 直 角 に 地面へと降り、そして音も立てず無事に着地した。
「ごめんごめん。だって歩くの疲れるからさー」
「若いうちは良いかもしれんが、適度な運動は日々心掛けるべきだぞ、モル」
バハラもレジイもいつもの事なのか半ば諦める風にして苦言を呈しているのはさておき、先程の光景ははたして見間違えだったのかと僕は目を擦って、彼女らを見比べる。
身長はレジイ>バハラ>モルブの順に高く、いずれも顔は整っている“美人”に該当するにはするのだろうけれど、しかし本当に血が繋がっているのかという位に、三人が三人とも似ていなかった。
「ねーねーそこの恰幅の良いおじさん。ボクねーモルヴっていうんだけど、おじさんのお名前はなぁに?」
「おじっ!? ま、まあいいか別に……。俺の名前はアツシだ。富も名誉も持ち合わせていない、いわば流浪の戦士という奴だな」
幼女から見ればおじさんなんだ(場合によってはフケ顔とも取れるので単純に死にたい)という若干の落胆をなんとか胸の奥底に留めつつ、僕は既に訊き間違いを発祥とするこの世界でのあるべき名前と即興で考えた胡散臭い経歴とを、モルヴへと伝えた。
「えっ、えっ何それ凄そう! そういえばさっきからギーくんの姿が見えないけど、もしかしてアツシ様がやっつけちゃったの!?」
「いややっつけた訳では無「残念でしたねモルヴ。毅然とした態度にて自ら手を下さずに、闘わずして相手の心そのものを打ち負かしたアツシ様の英姿は、このわたくしが傍らにて独占よろしく目に焼き付けておりましてよ」
「やばっ!? それって最高イカしてんじゃん!! ボクも見たかったなーいいなぁレジ姉だけずるいな~」
「えっちょっ何言ってるんですレジイさんあなたが一人で「ほぅ。中々やるではないか。彼奴はモルよりも年下だとは言え、加護者-ギフト-の中では中の上に位置する相当の手練れの一人。それを単身生きたまま退却させたとは、恐れ入った。今私は言葉で表せないぐらいに感心しているぞ。私達を救い出してくれた礼、三姉妹を代表し長女たる私が代表して礼を言おう。本当にありがとう、アツシ様」
うん。その、なんだろう。
すっごく良い風に勘違いされている……。