不測ハーレム-2-
「あ~~、えっと、うんと……そう! 三姉妹ってことは、レジイさんの他にもあと二人妹がいるってことなん、ですか?」
彼女の嘆願に対しての是非は一旦保留にし、僕は話題を変えるべく質問を投げかけた。
「わたくしは次女ですので姉と妹の二人が、といった方が正しくはありますが」
もっとも三人の中では一番身長が高いのでよく長女だと勘違いされるのですけれどもと、彼女は可笑しそうに口元を隠す。
「じゃあもといになるんですけど。そのお姉さんと妹さん、一体どこにいらっしゃるんですかね?」
本来であればここでグズグズしている暇は無く、ここから直ぐにでも離れなければならなかったのだが、見ず知らずとはいえ何やら訳アリの美人さんに頼みごとをされたからには、無下には出来ないというのが人情である。
――元来、というか生前に殆ど友達という存在を持ち得なかった性質が後押ししたのやもしれぬが。
ともかく僕はレジイとその姉妹と行動を共にする事に決めた為、残す二人の安否を彼女へと確認する。
居場所を尋ねたのには理由があって、馬車の荷台(中は意外と広く食糧や衣服を始めとした日用品は充実しており大人4~5人はくつろげるだろうスペースも確保されていた)には誰もいなかったし、辺りを見回してもそれらしき人影は見当たらなかった為に。
「アツシ様があの蛮人達を引き付けている間に、助けを呼ぶべくここから離れたのですよ。じきにここへと戻ってまいりましょう」
「そうですか。でも、あれじゃないですか? 折角ぼ……あいや、俺が奴らの注目を引いている内にいっそ、三人でバックレちゃえば良かったのでは??」
結果論でしかないとしても、仮に僕を始末した後に彼らがこの場に戻ってきた際、三人いた内の二人がいなくなっていたとしたら、留まっていた最後の一人は二人分余計に責任を取らされるのではという、僕の推理である。
「いいえ。ここに誰一人いないとなると、当然追手がやってきます。ならばせめてもと、中間であるわたくしが殿(しんがり)を務めるべきだと、敢えてここに残ったのです」
なるほど、彼女らなりのリスクヘッジという訳か。
他人事ながらも僕は感心し、ぽんっと手をうった。
「時にアツシ様。その、少し言いにくいのですが……」
レジイは顔を赤らめ俯き加減に、僕に向けてそっと何かを差し出した。
「姉や妹が戻ってくる前に、こちらをお召しになっていただければ幸いかと……」
見たところそれは、この世界における一般的な衣服の様なものであった。
それが指し示す意図は、考えるまでも無く明白だろう。
何故ならば僕は一糸まとわぬ、全裸状態――今の今まで完ッッッ全に忘れてた。
「……アッ!!! ごっ、ごごごごめんなさいすぐ、すぐにっ着ますっ!!!」
羞恥心で猛烈に死にたくなりながら、僕はレジイが差し出す両手からひったくるように衣服を受け取り、目一杯焦りながらも無事着替える事に成功した。
そのタイミングを見計らってか、はたまた只単に偶然が重なったのかは定かでは無いが、丁度その時である。
「てめぇの命よりも女とイチャつく方が大事、ってか。どうにもこうにも救いようのねぇ空前絶後のノロケカス野郎だなぁオイ」
走って来たのか若干の汗をかいている、見覚えのある子供の姿が近くにあった。
「おっ……お早いお帰りで……親分」
「だーれが――――親分だゴルァアアァアア!!!!!!」
【悲報】アツシ様こと僕、殺意全開のギギに追いつかれる【オワタ】