自爆霊穂"無実ちゃんと十一対の並行世界

前作十一人の未来罪人の続編。2021/02/22更新スタート。出来れば毎日更新。

刺突 後 渦炎 -4-

 想定上ではてっきり火球や火柱の類が一直線に向かってくると思っていた矢先、明らかに拍子抜けした感が否めなかったが。


 身構えた僕の前方より、ふわりとした風が吹いてきた。


 しかし数秒後にその認識は大きく誤っていた事を、僕は思い知らされてしまのであった。



 ギギと呼ばれた子供が僕に手をかざし、巻き起こった風の軌道上を、直後。



 途 轍 も な く 熱 い 何 か が 轟々と音を立てて通過した。



「ぐ……ッ熱っっつ……!!!」



 正体不明の熱波を真正面で受けた僕はたまらず、反復横跳びの要領で向かい合った子供との直線軸をずらす。


 彼と僕とを結ぶ一直線上に存在していた草花は、あれよあれよと炎に包まれ、見る見るうちに灰と化していった。



「あん……? つーかてめぇはどうして無事なんだよ」


 明らかに不機嫌そうな、それでいて不可思議そうな表情を浮かべながら、ギギは舌打ちをする。


「ぶっ殺すつもりでブッ放したのに、熱いで済むのはおかしいよなぁ、あぁ?」


「だ、駄目ですよぶっころすとかそんな汚い言葉使っちゃったら。お兄さんはねぇ、よく犬とかに吠えられたりするけどもこう見えて子供は好きなんですってば。だから、ねぇ? 今までのことは水に流して仲良く……」


 仲良くしましょうよお友達になりませんかと言いかけた僕の言葉は、無慈悲なる追撃にて遮られることとなった。


 再度僕へとかざした右掌に加えて、もう片方の左掌を上下に振る動きと連動し――今度は前方プラス上方より、ゆるやかな風が流れてくる。


「黙れ。うるせぇ。さっさと黒焦げになりやがれボケ」


 そよいだ風よりワンテンポ置いて、複数の熱い渦が僕の身体を容赦なく炙っていく。


「ッ……! だからっこれぇえっ熱いからさぁあぁ!! 止めてよホントにッッツ!!!」


 草木に燃え移った火で幾分か髪の毛を燃やしてしまい、まだ無事な右手ではたき消しながら、僕はジグザグにその場を動き回り熱波をやり過ごすことに躍起になっていた。



「あのさぁ、繰り返すけどよぉ。普通は熱いだけじゃ済まねぇんだって。そこに転がってるボンクラ共よろしく炭みたいになっちまうんだって」


 見ると、地面には先程僕が無力化した二名の男が横たわっていた。


 否――いつの間にやらその身を 焼 死 体 そ の も の に変えており、二度と起き上がることはないだろう。



「マグレじゃねぇっつーことはよ」


 首の裏、衣服の内側から長い棒状のものを取り出しながら、ギギは言う。


「自覚はねぇみたいだが、てめぇも加護者-ギフト-っつー解に至っちまうわな。面倒臭ェが、そうなるわな」


「え、はい? なんて言いました? ぎふ、と……ってなんぞ??」



 僕が投げかけた質問を当然の権利の様に無視して、先程目にした牛刀の2~3倍はある長さを持つ黒っぽい棒を べ ろ べ ろ と 舐 め 回 し 、やれやれと肩を竦めてギギは片目を瞑った。


 滴(したた)る唾液が舐(ねぶ)られた棒にまとわりきらきらと光っていたが、程なくして青白い炎へと変化を遂げる。



「【磊炎混-マグカイバァ-】を人に向けて振り回すんは久々だぜ。その必要性がある位におっさんがヤベェ奴だからこそ、僕も本気にやらなきゃならねぇっていう寸法よ」



 両手を棒の中心に添え、ひゅんひゅんと風切音を鳴らし回転させながら、ギギは僕へと言い放った。




「折角奥の手を出したんだ。簡単にくたばんなよ。なぁ、オッサン?」