自爆霊穂"無実ちゃんと十一対の並行世界

前作十一人の未来罪人の続編。2021/02/22更新スタート。出来れば毎日更新。

刺突 後 渦炎 -2-

 皮膚が擦り切れる強烈な痛みに次いで、腹の辺りにドスンと大きなものがのしかかってくる。


「ハハァッ! 手間取らせやがって、ついに捕まえたぞオラァ!!」


 追手である男の片割れは、僕へと馬乗りになっていた。


 刃渡りは目検で40cmを優に超える牛刀の様な凶器を装備している男に、僕はマウントを取られてしまったのだった。



「かなり焦ったが……ギリ間に合ったな。おう兄弟、さっさとソイツ片付けろよ。じきに2分が経つ。1秒でも過ぎちまったら俺らまでギギ親分に焼かれんぞ」


 もう一方の男は少し離れた位置で待機しながら、自分達が来た道を不安そうにきょろきょろと振り返っていた。


 恐らくは不測の事態に備えてなのだろうか、僕の始末は敢えて自分では無く相棒に任せようと、しきりに行為を促している。



 文字通りの絶体絶命――状況はもはや詰んでいる。


 降参しようとも懺悔しようとも、事を終える道は 僕 が 死 ぬ 以 外 に 残されていないのである。



「あの……本当に僕、なんでもしますんで、許していただけませんかね……。命だけはどうか……あとおなかが重たいんでどいて欲しい……」


 命乞いなど無意味で、何なら無駄どころかするだけで逆効果でさえある事はハッキリとしているのに、そんな自明の理を無碍(むげ)にする不条理を、僕の口が勝手に喋り出していた。


「ん? おいお前。今なんでもするっていってよな。聞き間違いじゃあ、ねぇよなぁ」


 両足でがっしりと僕の胴体を逃げられないように固定しながら、男は目を細め残忍な笑みを口元に浮かべる。


「はっ、はい! 間違いございません! どうか許してくださいなんでもしますから!!」


 僕の精一杯の嘆願は受け入れられるべくもなく、


「んなら今からメッタ刺しにしてやんから精々死なねぇように耐えンだなぁああぁああ!!!」


 星の光を受けて鈍く光る凶刃が額目掛けて振り下ろされ、僕の異世界転生は幕を閉じ――


―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―

 ――る訳も無く、余裕で続くのだった。


 というか閉じていたら今の回想は誰が語ってるのか分からないし新手の叙述トリックなのかというツッコミが入りそうなので、言っても栓なきことだろう。


 ガキンッ!


「は……?」


「……え?」


 刺した側も、刺された側も、双方言葉を失っていた。


 急所である頭部に突き刺さり、頭蓋を砕き脳内を損傷する筈であった牛刀は、結果。



 僕の額の皮膚を ほ ん の 少 し 裂いたのを精一杯に……その刃は 真 っ 二 つ に へ し 折 れ て しまったのだから。



 事態が飲み込めず、理解が拒絶反応を起こしたが故の、刹那の硬直時間。


 僕はどうにか男よりも先に正気を取り戻し、動く。


 具体的には自由になって両腕を 思 い っ き り 男の顔面へと突き出していた。



「ァが……ッ!!」


 無防備な状態にて顎への不意打ちを受けた男は、そのままブリッジをするように後方へと倒れ込んでいく。


「なっ……てっ、てめぇ!?」


 絶対的有利にいながらも、瞬く間にそれが崩れかけている事を懸念したであろうもう一人の男の表情は、明らかに狼狽していた。


 そして窮地を脱した(というよりはむしろぶっちゃけ100死んだかと思っていたがちゃっかり死ななかった事実の落差に因る所が大きいに違いないのだろうけれども)僕はというと、昼間と同じく、しかし更に大きな声で叫ばずにはいられなかった。




「おっ……おぉぉぉぉぉおッ! 俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEe!! 最強ォォオオオォオオォォオオオオォ!!!!!」