自爆霊穂"無実ちゃんと十一対の並行世界

前作十一人の未来罪人の続編。2021/02/22更新スタート。不定期更新。

轟龍翼下唯一列島国“ヤーパン”-2-

 陸の孤島というにはそれなりの広さを持つ(火本国と同様に約227,942.83㎢の面積を持つ)領土とはいえ、だ。


 訳の分からぬまま地上の9割以上の同種同族が爆死したのに加えて、よもや外部――海の向こうへと出られないのは、きっと当事者達にしか計り知れない絶望的な閉塞感は必至だろう。


 聞けば海路は当然として、空路であったとしても、一定距離を侵せば即座に爆死の憂き目に遭うのだという。


 すなわちそれは、今まで当たり前の様に行われてきた“貿易”という概念が二度と行えないという事実に他ならないのだろうが、しかし実のところけっして流入物が皆無という訳でもないらしい。



「不規則ではありますがそれでも定期的に。海からは食料品・日用雑貨品が漂流し、空からは燃料・鉱石類が落下し、このヤーパンに届けられるのです」



 聞けばこの終末世界的な状況が日常と化してから1年ほどの月日が経つというが、ヤーパンへの差出人不明の物資が提供されるという現象は、ヤーパン国外全人類爆殺開始とほぼ同時に、各地にて観測されたそうだ。


 GDP国内総生産)の保持、エンゲル係数低下防止の要ともいえる贈り物の数々は、残存人類たるヤーパン国民に対して一定水準の生活を保障するにおいては、折りしも欠かせない必須の奇跡だともいえよう。


 が……変化は外部からもたらされるのとは別に、内側に住まう住民に対しても発生した模様であって。



「ヤーパン国民の極々僅かな一部の者達に、ある才能が芽生えたのですよ」



 曰く、ここまでに何度か俺も耳にし、実際に対峙もしてきた、例外的存在の総称。




 “加護者-ギフト-”と呼ばれる者達が、このヤーパンには存在しているのであった。




 ギギの様な暴力性を秘めるモノもあれば、日々の暮らしに貢献する実用的なモノ、あるいはそのどちらにも属さないモノ。


 種別や効果は人によりけりで、類似こそあれ同様の能力は存在し得ない、千差万別多岐にわたるとの事。


 かつてのデスゲームにおいて【シアーハートサーチ】という“逃げる対象を必ず追い詰める”固有能力を一時的ながらも所有・行使していた俺だからこそ、割とすんなりその説明は齟齬なしに受け入れられたのだと思う。


 国民の0.0001%にも満たないと言われている超が付く程に希少な、ある種の新人類。


 恐らくは芸能人を肉眼で目にするよりもレアな存在なのだろうが、しかし俺はこの世界で目を覚ましてから今に至るまでの間、既に4人の加護者-ギフト-と遭遇している。



 そう、そうなのだ。



 ギギに拘留されていたこの美人三姉妹、バハラ・レジイ・モルヴ。



 彼女ら3人が3人とも例に漏れず――選ばれし者の一角を担う“加護者-ギフト-であったのだった。