不測ハーレム-3-
「ナメてんな? ガチでテメェ僕の事ナメ腐ってんな?? 煽って煽って煽り倒してんな??? そーだよ、そのとーりだよ。効果はバツグンにテキメンで、まんまとテメェの術中にはまっちまってるよ。嬉しいか、それとも楽しいか? だったらちゃんと笑ってくれよなぁああああ!!!」
「ひっ……」
ギギはまるで沸騰したヤカンの如くブチギレていた。
その様相を見、僕はというと情けない悲鳴を喉の奥に押し込めるぐらいの反応しか返せないでいる。
「流石の僕でもさぁー、ここまでこんなにまでこれほどまでにコケにされちまうとさー、もうプッツン来ちゃうよねー。だってそれを証拠にー今ぁー? なんだか視界が真っ赤っ赤だもんなぁー」
「きっ、きっとあれですよ! 網膜疾患の一種的な……だから早くおうちに帰ってブルーベリーなりなんなりでビタミンCを摂取してですね……」
小粋なジョークを絡めた僕の恐れ多い説得は、もはや今のギギの耳には一切入っていなかった。
「まず両脚をバキ折ってー、でもって両腕の腱ブッタ切ってー、両眼玉ボロンと抉り出してー、全身の皮膚を隈なくメラ火炙りにしてー」
幼さを残したあどけない顔の子供が口にするには、あまりにも不穏で不吉な不安しか感じさせない諸々のワード――あるいはそう遠くない未来に僕の身へと振りかかる処刑内容の予告とも言える――が、伸ばした語尾に添えられて薄闇に反響する。
絶対的な力量差がありながら一度逃した、僕。
まんまと逃げられたかと思いきや女性とお喋りに興じている余裕綽々な、僕。
相当腹が立ったのだろう、怒髪冠を衝く以上に、ギギは僕に対して苛立ったのであろう。
その証拠に、ギギの主力武器たる【磊炎混-マグカイバァ-】はおろか、頭から爪先までをすっぽり覆い尽くす程に濃密な青白い炎を、彼は纏っていた。
「簡単には死なせねぇ。出来る限り長く長ァ~く 自 ら 殺 し て く だ さ い っ て お 願 い す る ぐ ら い に、悲惨で凄惨な至極残酷な拷問を――――――あぁ?」
うーわっうーわっうーわっ(エコーがかったやられボイス)もう駄目っすわこんなん詰みじゃないですかあぁーもうヤダヤダ本当勘弁してくれませんかねこの調子じゃあと1分も経たない内にたぶん逃げられない様足らへんを折られてそこから立て続けにハチャメチャが押し寄せてくる以上にグッチャグチャにされた上でたくさん痛い事施されることになって気絶しようにも気絶できないぐらい痛めつけられてきっと発狂しちゃうことになっちゃうんだわーうわぁー無理だー無理ゲーだ~~なんかの手違いで負けイベントの体は体だけど拷問シーンを回避できないもんかね~~~~~~……なんて、他力本願で自暴自棄な現実逃避に及びかけていた頃である。
僕とギギの間を阻むように、一人の女性が割って立った。
「おやめなさい。これ以上は」
これ以上の暴挙は許されません、と。
知り合って間もない、関係性のかの字すらも持ちえない、とても拙くて酷く希薄な繋がりと縁でしかない筈の、彼女。
レジイは良く通る声で、そう言った。