これまで生きて来た中で、一度死ぬ迄の然程長くない人生の中で、己にとっては争い事など無縁だった。 殴られたことは沢山あっても自ら手を出したことは只の一度も無かった僕が、そんな僕がである。 明らかに暴力に慣れ親しんでいるであろう名の知らぬ男を、…
皮膚が擦り切れる強烈な痛みに次いで、腹の辺りにドスンと大きなものがのしかかってくる。 「ハハァッ! 手間取らせやがって、ついに捕まえたぞオラァ!!」 追手である男の片割れは、僕へと馬乗りになっていた。 刃渡りは目検で40cmを優に超える牛刀の様な…
突如として始まったこの状況。 例えば漫画のコマ枠内――あるいはゲームのプレイ画面が映し出されたモニターの枠内にて展開されいると、そんな仮定をしたならば。 これはきっと物語の導入部分だ。 分かり易すぎる位にあからさまなモブ悪役と事を構えるに至った…